第5話 ひとツボ三里で胃腸も安心、芭蕉だけは知っていた!?

~『おくのほそ道』にみる 足三里の“旅”効能~

 

針子: 月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人なり…

Q太: 何ですか?それ。

針子: 松尾芭蕉の『おくのほそ道』。知らないの?

Q太: 知ってますよー、松尾芭蕉くらい。俳句を詠む人ですよね、三重県出身の。

針子: ご名答!芭蕉は元禄時代に活躍した伊賀出身の俳人よ。
その芭蕉が四十代半ばのころ、お弟子さんを連れて東北から北陸を巡る
長い旅に出たのよ。『おくのほそ道』は、六百里(2400キロメートル)を
踏破したその旅の様子を、俳句で綴った一大紀行記なの。

Q太: 2400キロメートル!?
まさか車も電車もない時代に…もちろん歩いてですよね。

針子: そうよ。当時の40代にしては、たいした健脚よね。

Q太: あっ、授業で習った気がする。長旅の前にお灸をしたとか…

針子: またまたご名答!『おくのほそ道』の中で芭蕉は、
『もも引の破をつづり、笠の緒付けかえて、三里に灸すゆる』と書いているわ。
でも、よく覚えていたわね。

Q太: 足三里にお灸をすると、健脚になって三里歩けるんですよね。
お菓子のキャッチフレーズみたいだなぁと、ずっと思ってたんです。
『一粒で300メートル』って。

針子: たしかに足の三里で、健脚になるかもしれないわ。
でも、芭蕉が足三里に灸をしたのは、健脚だけが目的ではなさそうなのよ

Q太: えっ!?それって、どういうこと?

針子: 足三里は、“足の陽明胃経”といって、胃腸にも効くツボなの。
明の時代に書かれた鍼灸の古典にも『吐腹は三里に留む』とあるわ。
芭蕉は旅立つにあたって、お腹の調子を整えておこうと考えたんじゃ
ないかしら。

Q太: そうかぁ。今でも旅行に行くとき、胃腸薬とか持っていったりしますもんね。
ツボって筋肉だけじゃなくて、内臓にも効果があるんですね。

針子: そう!勉強になったでしょ?じゃあ、その調子で一句ひねってみて。

Q太: ええーっ!?勘弁してくださーい。